【不定期開催】【第一回】【ギターの科学】ギターの弦の振る舞いを数式で表す〜弦振動の導出

どうもこんにちは。今日、昼ごはんを食べるときに好物のブロッコリーを床に落としてしまった、某国立大化学科学部生のサブです。

今回から、新たに新企画(馬から落馬、みたいな表現ですが)をやってみたいと思います。それは…

ギターに関する現象を数式で表現してみる

です。私自身、実はギターを8年ほどやっていまして(自己紹介にも書きましたが、大のメタラーです)、ギターには興味を持って取り組んできました。そこでふと、ギターを何かと結び付けられないか、と考えてみました。また同時に、自分が学ぶことを現実世界に結び付けられないか(机上の勉強で済ますのではなく)、とも考えていました。ということで、上のような企画を思いついたわけです。

この不定期企画では、ギターに関する現象を、私の能力の範囲内でなるべく定量的に再現する、ということを目的としています(今後、他の楽器についても同様な企画をやるかもしれません)。

(注. 私自身、所詮は数学専門ではない学部生です。間違いがございましたら、「まだまだ青二才だな」、とどうか思ってください汗)

今回は手始めに、基礎的な現象として、弦振動を扱いたいと思います。ギターの弦を1次元とみなせば、かなり簡単に弦振動を再現できるのではないでしょうか。今回は、振動の減衰のない弦振動を波動方程式の解として、フーリエ級数を用いて表現したいと思います。ではいきましょう!

まずは状況設定です。ギターは弦を指で押さえて、弦を弾くことで音を出します。そこで、以下のような条件設定にしました。(以降、弦を一次元とみなし、振幅uを位置 x と時刻 t の関数:u(x, t)とします。)

  • 弦は、xについての区間[0, a]での長さaの線とみなす
  • 弦は以下のように、両端を固定されているとみなす
u(0,t)=u(a,t)=0
  • 弦は時刻 t=0 の時に弾くとし、その時の弦の形は、x = 0, aを通る、上に凸な放物線とする(自分のギターで試しに弾いてみるとなんとなくそんな感じに見えたため)。つまり、
u(x, 0)=x(a-x)
  • 弦振動の初期条件として、以下のように設定する(時刻0で弦を静かに爪弾いたとする)
\dot u(x,0)=0

以上の条件のもとで、波動方程式①:

\vcenter{\frac {\ddot u(x,t)} {v^2}}=\nabla^2 u(x,t)

を解きます(v:弦を伝わる音波の速さ)。

この波動方程式の解法として変数分離法を採用してみます。u(x, t) = X(x)T(t)と変数分離して①に代入して整理すると、

\vcenter{\frac {\ddot T(t)} {v^2T(t)}}=\frac {\nabla^2 X(x)} {X(x)}

となります。両辺がxについての式とtについての式とにきれいに変数分離できたので、両辺を定数(<0)で置くことができます(注1)。したがって、

\vcenter{\frac {\ddot T(t)} {v^2T(t)}}=\frac {\nabla^2 X(x)} {X(x)}=-k^2

と置けます。

この式から、t、xそれぞれについて、

\begin {align} \ddot T(t)&=-v^2k^2T(t)\\{\nabla^2}X(x)&=-k^2X(x)\end{align}

と整理されます。この2つの式を解きましょう。

(1)について、

この形は三角関数なので、

\begin {align}T(t)=Acos(vkt)+Bsin(vkt)\end {align}

となります。ここで、弦振動の初期条件:∂u(x, 0)/∂t = 0を考えると、B = 0となる。

(2)について、

この形も三角関数ですので、

X(x)= Ccos(kx)+Dsin(kx)

となりますが、ここで、条件設定にある、

u(0,t)=u(a,t)=0

を考えると、

\begin{align}C&=0\\k_n&={\frac {n\pi} {a}}\end{align}

となり(n=0, 1, 2, …)

X(x)=Dsin(\frac {n\pi x} {a})

となります。

この式と(3)式より、nに依存する解である、

X_n(x)T_n(t)=A_ncos(vk_nt)sin({k_n}x)

が得られます。

ここで、①は線形であることを用いると、①の解は、上の解をn=0,1,2, …として足し合わせたものである、

u(x,t) =\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}A_ncos(vk_nt)sin(k_nx)

となります。なお、この式でn = 0の時、u(x, t) = 0となるので、以後、n = 1, 2, 3…として考えます。

では最後に、得られたこの解に対して、残りの条件設定を考慮していきましょう,

u(x, 0)=x(a-x)

についてです。これを用いて、

u(x,0)=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}(A_nsin(k_nx))=x(a-x)

となります。これは、関数:x(a – x)で、xの区間[0, a]を[- a, a]へと拡張した時のフーリエ正弦級数展開とみなせるので、係数Anが決定できて、

A_n=\frac{2}{a}\textstyle\int_{0}^{a}(x(a-x)sin(k_nx))dx

と求められます。Anについては、この積分を計算すれば求まります。

以上より、減衰のない、ギターの弦振動を表す関数u(x, t)を求めることができました(u(x, t)がフーリエ級数で表現できるのかどうかという議論はありますが、ここではとりあえずできる、としておきます)

ただ、現実のギターの弦振動は時間の経過とともに絶対に減衰しているので、何かしらの形(expの形か何かで)で時間と関連づけて微分方程式に組み込めるはずです。それについてはまた追って考えてみましょう。

ではでは、この辺で。みなさんお元気で〜

注1. 最右辺をk^2とすると、u(0, t) = u(a, t) = 0 を満たせなくなってしまうので、不適