昨日、もやしスパゲティを食べていたら、ふとしたときに、もやしを机から落としてしまいました。しかし、そのモヤシが奇跡的に、床にあったゴミ箱に収まり、難を逃れました。こんにちは、化学科学部生のサブです。
今回は、前回の続きで、最後の章にしようと思っています。前回では、化学という学問が実験学問としての性質を強めていった過程を自論でお話ししてきました。では、現代においての化学は、果たして昔と変わらないような性質(つまりは実験学問)を持っているのでしょうか?…私の意見としては、「部分的にはNo」です。化学は、かつてのような実験学問以外の側面をも持ち合わせてきているように見受けられるのです。そして、その側面をみることで、化学という学問が今後どのような歩みを進めていくのかがおぼろげながらわかるのではないか、と私は踏んでいます。今回は、そのようなことについてお話ししようと思います。2つにわけてお話ししていこうと思います。
現代の化学の性質
今日、化学は相変わらず目覚ましい進歩(事柄の発見や、既知の事柄の子細の解明)を続けています。その進歩の仕方は様々で、誰もが全く知らないような最先端な事柄が発見されたり、極めて身近な事柄のメカニズムの解明(最近は理研のプレスリリースで、水面上の水分子がどのようにして自身のエネルギーを失っていくかが明らかにされた、というのがありました)されたりなどです。このような発見の積み重ねで、化学は発展してきました。そして、ほとんど全てと言っていいほど、このような発見は地道で過酷な実験を積み重ねることで(血のにじむ実験)得られてきたことは間違いありません。このような流れ(血のにじむ実験→発見)は、現代の化学でも色濃く残っています。つまり、現代の化学の主な性格は実験学問であると言っても何も矛盾ありません。
しかし、現代の化学は、そのような性格だけを持ち合わせているわけではないように思えます。では、どんな性格も持っているのでしょうか?…それは、他の科学学問のインターセクションとしての性格です。つまり、他の科学学問が化学というフィールドで交わっているのではないか、ということです。
例えば、我らが化学科の授業を見てみると、多種多様な科目があります。有機化学(化学反応によって炭素化合物を合成する)や、無機化学(錯体化学だったり)、量子化学(多電子系で起きる現象の構築、解明)、生命化学(分子レベルで生命を扱う)、地球化学(地球のダイナミクスの解明や地殻などの元素レベルでの解析)、分析化学(物質の分析手法の開発)、固体化学(固体中での電子の振る舞いを調べる(この授業は自分は取っていないので良くわかりませんが))、電気化学(勝手に進んでくれる酸化還元反応を使って、電圧を取り出す)などなど、、。本当に多岐に渡ることが見て取れます。加えて、研究室にも、物理寄りのことだったり、生命寄りのことだったりを研究するところは数多あります。このような光景は、自分にはまるで、化学という場においていろんな学問が交流しているように思えるわけです(化学中心的な書き方で申し訳ないですが)。とにかく幅広い。最初、化学科に進学した新入生は驚くことでしょう。
化学はこれまで、多種多様に発展してきました。その結果、いろいろな他の科学学問との境界線を研究するようになってきていると私には思われます。
化学の今後の歩みは?
インターセクション的な性格をも化学は持つようになってきている、と前で述べたわけですが、では、そんな化学は一体今後どのような歩みを進めていくことになるのでしょうか?今回、最悪なパターンと最高なパターンを私は考えてみました。では見ていきましょう。
まずは最悪なパターンです。考えられるのは、他の科学学問との競合による化学の後退です。おそらく、化学はこれからも、学問の境界線上の研究を続けていくでしょう。ということは、必然的に、その境界上では相手の学問とのせめぎ合い(攻防)が始まっていくわけです。化学は、そこで活路を見出す必要があります。もしそこで負けてしまえば、そこから化学はじりじりと後退するほかありません。「学問が後退するようなことなんてあり得るのか?」という疑問を持つ方はいるかと思いますが、実際にあります(というか、明らかに後退している、と私には思える学問があります)。ここでその学問を言ってしまうと炎上するので言いませんが、それは、戦後から明らかに衰退、今は大学に残っていながらも息絶え絶え、職業訓練校のようになってしまっている学問です。また、境界線上での化学のせめぎ合いは近年激しくなってきているように感じます。例えば、最近、ノーベル化学賞では結構生物関連のものが多いです(去年なんかCRISPR-Cas9です。生物学賞じゃないのか?と私には思えてきます)。こういうのをみると、化学と生物とのせめぎ合いが激しくなっているのかな、と思えてきます。化学が後退して消滅、だなんてあって欲しくない、、
では次に、最高なパターンです。考えられるのは、他の科学学問の知識を吸収してそれを化学独自の視点で生かして発展する、です。化学が学問の境界線を研究していく事態はこれからもおそらく同じなわけで、そういう状況下で考えられる最高のパターンはこれに相当するでしょう。では、化学独自の視点、とは一体なんでしょうか?それは、実生活への分子レベルでの還元だ、と私は思っています。化学の何が一番の強みかというと、分子レベルで自由にモノを設計できることだと思うわけです。いろんなものを寄せ集めて何かを作ることはできましょうが、分子レベルで設計された物質は全く新たな物性を示すことがあります。そして、そのようなものの中から、私たちの生活を変えるものが生まれます(代表的な例では、リチウムイオン電池があります。2019年のノーベル科学賞ですが、この電池は起電力がとても高く、とても性能の良い電池です。これは現在、ハイブリッド自動車やノートパソコンをはじめ、日常生活で様々なものの中に入り、私たちの生活を支えてくれています)。このような実生活への還元を、いろいろな知識をもとにこれからも行っていけると、化学が今後も力強く発展していくことにつながることでしょう。
以上、化学の性格と今後の発展について考えてみました。化学を将来志す方は、自分なりのビジョンを持っておくとさらにいいかもしれませんね。(注. 化学科に入ると実験と講義とで押しつぶされそうになるのはここだけの話)
ではでは〜おやすみなさい