金利についてざっくり知りたい【第2回】

こんにちは。この記事は「金利についてざっくり知りたい」の第2回となります。

前回に引き続き、金利の仕組みに詳しくなって経済や投資関連の情報をうまく処理できるようになりたいという方へ向けて執筆しています。

今回のテーマは、長期金利金融政策です。まず、債券の基本的な仕組みについて解説させていただきます。続いて景気と金利の関係を見た後、日銀の金融政策についてお話させていただきます。

マイナス金利についても軽く解説していますので、合わせてご覧ください。

前回の記事をご覧になっているとより分かりやすいと思いますので、まだご覧になってない方はぜひ第1回の記事を先にご覧ください。

債券の基本的な仕組み

企業や国などが不特定多数の出資者からお金を借りるとき、債券を売るという形で取引が行われます。債券は発行している団体(借りている団体)によって国債・社債・地方債と呼び方が変わります。

債券には額面・利率・満期の3つ数字が決まっていることが普通です。お金を貸した人は毎年決まった時期に利子(額面×利率)を受け取り、満期が来たら額面の金額を返してもらうということになります。

したがって、債券は利子と元本を受け取る権利と言い換えることができます。

債券は転売することができます。転売される際の債券の価格は額面と同じとは限りません

具体例を考えてみると分かりやすいので、ここでは額面10000円、利率5%、満期10年の債券を想定してみましょう。簡単に利子は年末に1回受け取るとしましょう。実際には半年に1回や四半期ごとに1回などいろいろあります。

この債券を残存期間7年のときに11000円で買ったとしましょう。残存期間7年とは債券が発行されてから3年経ったため、利子はあと7年分受け取れるという意味です。

利子は常に額面10000円×利率5%=500円と計算され、買った値段とは関係ありません。また満期に返ってくる金額はやはり額面の10000円です。

この債券を3年目で買った人は、11000円で購入し、7年間利子を合計で3500円を受け取り、最後に額面10000円を受け取って、計13500円受け取ることになります。

11000円が7年かけて13500円に増えたことになりますから、この人にとっての年利は2500円÷11000円×100÷7年=3.25%となります。

このように債券の現在価格と残存期間を考慮して計算したの利回りを、流通利回りと呼びます。債券に元々設定されていた利率のことを、流通利回りと区別するために表面利率と呼ぶことがあります。

債券の価格は、やはり売りたい人と買いたい人の需給のバランスで決まります。様々な思惑のプレイヤーが債券を売り買いすることで、最終的には均衡の取れた価格に落ち着くのです。

まとめ

  • 債券を買う=発行団体にお金を貸す。
  • 債券は転売され、その時の価格に応じて流通利回りが決まる。
  • 債券価格も需給バランスで決まる

10年物の国債の流通利回りが長期金利の基準

貸付期間が一年以上のときの金利をすべて長期金利と呼びます。

短期金利の代表が無担保コール翌日物レートであったように、長期金利もみんなが参考にする代表があります。

長期金利の代表は直近に発行された10年物の国債の流通利回りです。10年物国債は毎月新規に発行されるため、直近という条件がついているのです。

直近の10年物の国債の金利は大手銀行やネット証券のウェブサイトから確認することができます。

いちいち10年物の国債の流通利回りと呼ぶのは面倒なので、今後はこれを指して長期金利と呼ぶことにします。

銀行が企業に長期的に融資するときの金利は、長期金利を参考にして決定します。国債は最も安全な資産なので、そもそも同じ金利で貸せというなら銀行は企業より国債を選びます。

第1回でご説明したとおり、企業への貸付には一定のリスクがあるので、その分のリスクプレミアムが長期金利に上乗せされて企業に課されているのです。

よって、長期金利が変動すると、企業に対する金利も連動して上下します。

まとめ

  • 10年物の国債の流通利回りが長期金利の代表値
  • 長期金利と企業に対する金利はある程度連動する

景気と金利の関係

第1回の始めに、景気がいいと金利が上がり、悪いと下がるという話をしました。

景気がいいときは、みんなお金が十分あるので商品をたくさん購入した結果、企業はよく儲かります。すると、企業が事業を拡大しようとしてお金を借りに回るので、金利に上昇圧力がかかります。

逆に景気が悪いと、企業は設備投資をしたところで採算が合わないだろうと考え、借り手が少なくなり、金利は徐々に下がっていきます。

また、先に金利が変化したときに、景気は大きな影響を受けます。これは、金利が高くなると事業を断念する層が一定数現れ、反対に低くなるとやってみようと思う人が出てくるからです。

金利は事業主や企業の今後の計画に直接的な影響を及ぼし、結果国全体の景気が変化します。そして、景気がさらに金利の変化を加速させるという構造になっています。

現実では必ずしも景気と金利の動きが一致するとは限りませんが、ほとんどの場合このような考え方で説明ができます。

好景気と不景気は繰り返しやってくるのが世の常です。不景気が長続きすると良くないのはすぐに分かりますが、実は景気が良すぎるのも良くないのです。

景気が良すぎるとその後の反動が大きく、長い長い不景気に突入することがあるからです。

設備投資をしても利益が十分でない企業は、借金の返済ができなかったり従業員に給料を支払えなかったりします。

ほんの一部の企業が設備投資を回収できずに倒産するならまだしも、多くの企業がそのような事態に陥ると、国全体で大きな不景気に突入します。

ですから、多くの企業が過度な設備投資をしないように、国が景気をしっかりとコントロールする必要があるのです。

ここで鍵になるのは、企業が銀行から融資を受ける際の金利は、無担保コール翌日物の金利10年物国債の流通利回りを参考に決定しているということです。

これらに個々の条件を加味したリスクプレミアムが上乗せされて実際の金利が決まるということでした。

したがって、各国政府や中央銀行は、行き過ぎた好景気と不景気を抑えるために、様々な金融政策と実行して長短金利を操作しようとします。

まとめ

  • 景気と金利は互いに影響しあっている
  • したがって金利を操作することで景気を操作できる

日銀の金融政策

景気が過熱しそうだなと判断したら、日銀は金利を上げる方向に操作します。景気が良くなると自然に金利は高くなっていきますが、それより速く上げようとするのです。

なぜなら、金利が高くなればなるほど、借り入れを断念する企業が多く現れるからです。

このようにして、好景気が長く続き過ぎて、後に設備投資に費やした資金を回収できなくなる企業が大量発生するのを防いでいるのです。

具体的にどうするかというと、銀行に国債を買わせるなどして、市場に流通する通貨の量を減らします。

以前は、公定歩合(日銀から銀行に貸すときの金利)を変えるなどして、より直接的かつ強制的に金利を変更していましたが、今は行われていません。

通貨の量が減ればその分貸し手が減ることになるので、需給バランスの結果、自然と金利を上昇していきます。

不景気が続きそうなときには、日銀は金利をより下げて、少しでも多くの企業に事業を進めてもらおうとします。金利を上げたいときとは反対に、国債などを買い戻して出回っている通貨の量を増やそうとします。

国債を売り買いする以外にも、銀行が保有する債券などを担保に資金を融資することもあいます。

こういった金利の操作のことを公開市場操作(オペレーション)といい、国債を買って資金を供給する(金利を下げる)ことを買いオペ、逆の操作を売りオペといいます。

また、公開市場操作に限らず、流通する通貨の量を増やすことを金融緩和、逆に減らすことを金融引締といいます。これらの用語もよく使われるので、合わせて覚えておきましょう。

まとめ

  • 日銀は出回る通貨の量を調節することで、金利を操作している。
  • 通貨の量を増やすことを金融緩和、減らすことを金融引締という。
  • つまり、金融緩和=金利を下げること、金融引締=金利を上げること。

マイナス金利

日本は1990年代以降から長期的な不景気が続いています。景気をなんとか回復させようと日銀が金利を下げ続けた結果、ついに金利は0%付近まで下がりました。

したがって、もうこれ以上金利を低くして企業が借り入れしやすくするという操作はできません。そこで日銀が考えた策がマイナス金利です。

マイナス金利というのは一見おかしな言葉に聞こえます。人にお金を貸すと減って帰ってくるというおかしな状況になっていますよね。どうして、このような状況があり得るのでしょうか。

これまで続けてきた金融緩和の結果、銀行にお金は十分あるはずです。

しかし銀行としては、このような不景気のさなか企業が倒産して回収できなくなることを恐れ、なかなか融資を実行したがりません。

そこで日銀は、銀行がもっているだけの「死に金」に罰金を課して、なんとか企業に融資してもらおうと考えたわけです。

日銀は銀行が日銀に預けている預金の一部に、-0.1%の金利を適用しました。銀行としては、お金を日銀に置いておくと、どんどん引かれていくわけですから、企業に貸す方が得だと思うようになるでしょう。

面白いことに、銀行間の貸し借りである無担保コール翌日物の金利もマイナスを示しています。

これは、どうしても貸す相手のいない銀行が、他の銀行にお金を押し付けあった結果です。

例えば、銀行Aはお金があり余っていて、このままだと0.1%を日銀に取られてしまうとします。そんなAに銀行Bが-0.05%で借りてあげてもいいと言ってきたとしたら、銀行AにとってはBに貸したほうが-0.05%で済むので、日銀に置いておくより得だと考えるのです。

銀行Bもただ借りるだけだと、Aから0.05%もらって日銀に0.1%取られて結果損なので、貸す相手を探す必要があります。

いずれにしろ、企業にとってはお金を借りやすくはなっているはずですが、このような不景気のさなか事業がうまくいく公算も低く、なかなか景気が復活できない状況が続いています。

まとめ

  • 1990年以降の日本では、度重なる金融緩和の結果金利が0%付近になった
  • もっと下げるために日銀はお金を貸ししぶる銀行に”罰金”を課すことにした
  • それがマイナス金利で、日銀に預けている預金の一部に-0.1%の金利を適用した