ポリアクリルアミドゲルが固まらないときの対処法

こんにちは。最近、伸長した核酸の解析や精製などで1日3,4回電気泳動をしているこたつです。

実験の進行上、DNAサンプルの調製が数日間連続していて、PCRと電気泳動をいったり来たりする日々が続いております。

タイトルにもあります通り、今回はポリアクリルアミドゲルが固まらないときの対処法に関する話をしたいと思います。

ゲルが固まらないとき、まずは試薬の入れ忘れを疑いますが、何度やり直しても固まらない場合、試薬が劣化している可能性があります。

疑うべきはAPS

型に流し込む溶液にはアクリルアミド/ビス混合溶液、緩衝液、尿素(DNAの変性剤。タンパク質に対するSDSと同じ役割)が含まれており、型に流し込む直前(もしくは型に流し込んだ直後)にAPS(重合開始剤)とTEMED(重合促進剤)を入れるかと思います。

これらの内、劣化しやすくて固まらない原因としてまず疑うべきは、アクリルアミドとAPSの2つになります。

アクリルアミドもAPSも固体の試薬で、必要なときに必要な量を溶解させるべきものです(要事調製試薬)。

しかし、毎回量って溶かすのはなかなか面倒なので、ある程度の量を作り置きしている方も多いでしょう。

また、どちらの試薬もゲル作成に使う濃度の溶液が販売されており、固体としてではなく溶液を購入している研究室もあるかと思います。

研究室のほとんどの方が頻繁にPAGEを行うなら、溶液を買ったほうが効率化できていいかもしれませんが、私のいる研究室ではそこまで消費量が多くないので、結構前に買った試薬瓶が冷蔵庫に残っていたりします。

特にAPSを溶液で買っている場合は要注意です。APSは水に溶かすと徐々に分解していき、重合開始剤としての活性が失われていきます。

APSは本来なら溶解させてから1週間以内に使い切るのが望ましいとされています。

ゲル作成に使ってくださいと言わんばかりに10%の25mLの溶液が和光から販売されていますが、一回に使う量は100μLやそこらなので1週間で全部使い切るのはほぼ不可能でしょう。(研究室の人数にも依りますが)

100mgのAPSを溶かして1mLだけ溶液を作るなどして、できるだけ小分けで調製しましょう。

研究室の先輩からは250μLずつ分注して凍らせて保管するという方法を教えてもらいました。私の場合は、その先輩よりはゲルを作る頻度が多いので、今のところは1mLずつ作る方法で行こうと思っています。

アクリルアミド/ビス混合液は比較的長持ちするようです。数ヶ月前に調整された溶液を使ってゲルが固まらなかったときに、APSのみを新しく調製し直したところきちんと固まったので、その時点ではアクリルアミドはまだ大丈夫だったようです。

凡ミス

私が研究室に配属されて間もない頃にやってしまったミスが、変性条件で核酸電気泳動をする際に、尿素の体積を忘れていたことです。

基本は二本鎖で存在しているDNAですが、一本鎖の状態で泳動したい場合、ゲルに尿素を混ぜておきます。

尿素の濃度は8Mが一般的で、例えば10mLのゲル溶液を作るときには4.8gの尿素を使います。

アクリルアミドやTBE緩衝液などを必要量入れて、水で10mLに合わせてから尿素を加えると、余裕で10mLを超えて、アクリルアミドの濃度が下がります。

普段は尿素を先に量ってからその他の溶液を加えるのですが、その日は天秤エリアが混雑していて尿素を後回しにしました。

他の溶液を先に加えてから水で10mLにメスアップして、そこに何も考えずに4.8gの尿素を加えたところ、アクリルアミドが薄くなって固まりませんでした。

4%のポリアクリルアミドゲルを作ろうとして上のようなことをやってしまうと、出来上がる溶液は3%切るくらいになると思います。これは固まるかどうか微妙な濃度です。

というわけで、変性ポリアクリルアミドゲルを作る際は、常に尿素から量り取るようにしましょう。